「ころがし」というのは競馬用語で、
- 的中したらその払戻金を次のレースに全額つぎ込み、複利効果を狙って莫大な配当を得る
という方法です。
JRAの競馬用語辞典に記載がありましたので、引用しましょう。
勝馬投票券の買い方の一種。この買い方の特徴は、あるレースを的中させたら、その払戻金をそっくり次のレースにつぎこみ、さらに的中したら、次のレースに……というように雪だるまをころがすように増やしていく点である。したがって成功したら、大変な金額になるが、逆に1レースでも不的中だとすべてが無に帰してしまう。
引用:JRA(https://www.jra.go.jp/kouza/yougo/w415.html)
この方法は、当然ながら、かなり高い的中率でないと成立しないので、対象馬券は最も的中率が高い複勝となり、
- 複勝転がし
のコツのようなものが、あちこちで紹介されています。
特に、YouTubeなどでは企画としての面白さもあり、人気コンテンツになっているようですね。
しかしながら、複勝転がしを企画として楽しむ程度なら良いものですが、
- 複勝転がしで儲けることができる
などということは、ほぼあり得ません。
もちろん、あなたが天才的な馬券師で他の馬券購入者を出し抜けるなら、話は別ですが。
ここでは、統計的な観点から、複勝転がしの真実を整理してみたいと思います。
私は初心者の頃に、10社ほど無料予想を出している予想サイトに登録して、買い目の組み方を研究していました。
(データ競馬では、予想だけでなく買い方もルール化しないと結果が安定しません)
その中でダントツに結果を出していたのがターフビジョンさんでした。
ターフビジョンでは毎週土日2レース分の3連複予想が無料で閲覧出来ます。
無料とはいえ、人気サイドに偏った3連複などでは決してなく、他社と比べても、結構本気で予想を出している印象があります。
例えば、下記のレースを見てください。
15点購入とはいえ、7人気の⑧ハギノベルエキプと11人気の④ベルファーリングを逃さず、見事的中させました(198.0倍的中)。
■ 6/2(日)阪神7R 3歳未勝利
こんな本気の予想を無料で出すのか、と思いましたが、宣伝の意味もあるからかえって下手は打てないのでしょう。
2レースのみの提供に限定しているというだけで、的中精度は有料のものと変わらないと感じました。
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単勝オッズ別の成績・回収率
まずは、複勝率というものが、単勝オッズによってどの程度変化するのか、俯瞰的に確認していきましょう。
全レース|単勝オッズ別(1倍台)の成績・回収率(2016-2020)※障害戦を除く
着別度数を[非表示 ]
単勝オッズ | 1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 出走 | 勝率 | 連対 | 複勝 | 単回 | 複回 |
1.1 | 51 | 7 | 4 | 4 | 66 | 77.3 | 87.9 | 93.9 | 85 | 96 |
1.2 | 64 | 14 | 12 | 7 | 97 | 66.0 | 80.4 | 92.8 | 79 | 97 |
1.3 | 116 | 35 | 15 | 18 | 184 | 63.0 | 82.1 | 90.2 | 82 | 96 |
1.4 | 189 | 62 | 34 | 40 | 325 | 58.2 | 77.2 | 87.7 | 81 | 94 |
1.5 | 229 | 89 | 42 | 60 | 420 | 54.5 | 75.7 | 85.7 | 82 | 94 |
1.6 | 199 | 95 | 47 | 79 | 420 | 47.4 | 70.0 | 81.2 | 76 | 89 |
1.7 | 338 | 170 | 73 | 148 | 729 | 46.4 | 69.7 | 79.7 | 79 | 88 |
1.8 | 331 | 146 | 105 | 166 | 748 | 44.3 | 63.8 | 77.8 | 80 | 87 |
1.9 | 311 | 169 | 103 | 209 | 792 | 39.3 | 60.6 | 73.6 | 75 | 83 |
1.1倍の複勝率は93.9%となかなかのインパクトですね。
これを複勝転がしに利用できれば良いな、と考えがちですが、5年間で44件しか出現していませんので、実際には適用することはできませんし、複勝オッズも元返しになるレベルの人気です。
実際に実行可能なのは、1.5倍以下でひとくくりにするくらいでしょうか。
次の表は、1.5倍以下とそれ以上で分けたものです。
1.5倍以下の複勝率は88.2%でこれでもすごい数字です。
全レース|単勝オッズ別(1.6倍未満・以上)の成績・回収率(2016-2020)※障害戦を除く
着別度数を[非表示 ]単勝オッズ | 1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 出走 | 勝率 | 連対 | 複勝 | 単回 | 複回 |
<=1.5 | 649 | 207 | 107 | 129 | 1,092 | 59.4 | 78.4 | 88.2 | 82 | 95 |
>=1.6 | 16,018 | 16,437 | 16,543 | 185,036 | 234,034 | 6.8 | 13.9 | 20.9 | 79 | 80 |
単勝オッズ1.5倍以下の連勝確率と期待回収率
連勝確率の求め方は単純です。
単勝オッズ1.5倍以下の1レースの複勝率が88%ですから、それを単純にかけ合わせればよいだけです。つまり、
- 2連勝・・・0.88×0.88×100=78%
- 3連勝・・・0.88×0.88×0.88×100=69%
のようになり、5連勝までまとめたものが次の表になります。
単勝オッズ | 複勝率 | 2連勝 | 3連勝 | 4連勝 | 5連勝 |
1.5倍以下 | 88% | 78% | 69% | 61% | 53% |
さて、計算をしていきましょう。
まず、2つ上の表から複勝回収率が95%なので、複勝オッズの付き方は、
平均的に95÷88(回収率÷複勝率)=1.08倍
よって、このケースで5連勝した場合の複利効果は、
100円×1.08×1.08×1.08×1.08×1.08=147円
となります。
53%の確率で100円が147円!どう思われますか?
期待回収率は147円×0.53=78%となり、1レースのみの期待回収率95%より下がってしまいますね(笑)
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複勝転がしの期待回収率を考える
先ほどの例ではオッズという指標のみに基づいて購入をしたわけで、もっと精度よく予測できる方なら、状況が変わります。
そこで少し思考実験のようなことをしてみましょう。
複勝転がしを3レースで実施します。スタートは1,000円とします。
まずは期待回収率が96%(複勝率80%×複勝オッズ1.2倍)となるケースです。
先ほどの例と類似なので、一般的な馬券購入者が実践するケースと言い変えても良いでしょう。
【ケース1】複勝率80% 複勝オッズ1.2倍とした場合(期待回収率96%)
結果 | 確率 | 配当 | 確率×配当 | 確率×購入 |
○→○→○ | 51.2% | 1,728円 | 885円 | 512円 |
○→○→× | 12.8% | 0円 | 0円 | 128円 |
○→×→- | 16.0% | 0円 | 0円 | 160円 |
×→-→- | 20.0% | 0円 | 0円 | 200円 |
○が的中、×が不的中です。不的中の場合はそこで転がし終了です。
○→○→○となる確率は0.8×0.8×0.8×100=51.2%となります。
以下同様に、
- ○→○→×:0.8×0.8×0.2×100=12.8%
- ○→×:0.8×0.2×100=16%
- ×:0.2×100=20%
となりますね。
配当は○→○→○のみ獲得できて、
1,000円×1.2×1.2×1.2=1,728円となります。
次のところが理解しにくいかもしれませんが、○×の4つのパターンは確率によってそれぞれ生じますから、配当にも購入金額にも確率をかけます。
すると、確率×配当は合計885円、確率×購入は合計1,000円です。(購入の合計は結局もとの1,000円に戻ります)
【ケース1】の期待回収率は88.5%となります。
【ケース2】複勝率85% 複勝オッズ1.2倍とした場合(期待回収率102%)
結果 | 確率 | 配当 | 確率×配当 | 確率×購入 |
○→○→○ | 61.4% | 1,728円 | 1061円 | 614円 |
○→○→× | 10.8% | 0円 | 0円 | 108円 |
○→×→- | 12.8% | 0円 | 0円 | 128円 |
×→-→- | 15.0% | 0円 | 0円 | 150円 |
【ケース2】は複勝率が上昇した場合を検討します。
つまり、同じ複勝オッズですが、的中精度が高く、期待回収率が上昇するような場合です(85%×1.2倍=102%)
予想が上手な方の実例としてとらえてください。
計算は同じになりますので、省略しますが、【ケース2】の期待回収率は106.1%となります。
複勝転がしの回収率の性質とは?
以上をまとめると、複勝転がしをすることで、
- 【ケース1】期待回収率96%→89%
- 【ケース2】期待回収率102%→106%
となります。
これが、複勝転がしの回収率の性質です。
つまりどういうことかというと、単体レースでの期待回収率が
- 100%を下回っていると、転がし全体の期待回収率は下降
- 100%を上回っていると、転がし全体の期待回収率は上昇
するのです。
この真実から何が言えるでしょうか。
一般的な馬券購入者レベルから抜け出すことができなければ、
- 複勝転がしは回収率を低下させる効果しかない
ということです。
残念ですが、意味がないのです。
逆も言えます。
同じ複勝オッズでも、的中率を高めて期待回収率が100%を超えるのであれば、転がしの意味はあるということになります。
自信がある天才馬券師みたいな方は後者でもいいですが、しかし、ふつうは前者ですよね。
オッズのみを見て判断する複勝転がしなどでは、儲けることなど到底できないのです。
必勝法や攻略法などに惑わされえず、真面目に競馬に取り組みましょう!
パンダズ競馬では、回収率向上をテーマに、さまざまなデータ・考え方をご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
パンダズ競馬とは
パンダズ競馬では
- 過小評価条件
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を回収率向上の具体的な手段としてとらえ、競馬ファンの方にさまざまなデータを紹介しています。
この2つを実践するだけで「予想能力がそのままでも回収率が上昇する」というのがパンダズ競馬の一貫した主張です。
この2つの手段について、参考記事をまとめて紹介いたしますので、よかったら合わせてご覧ください。
過小評価条件
まずは過小評価条件を検討し、過小評価馬を見出すのが第一歩です。
パンダズ競馬では、さまざまなデータベースで過小評価条件を紹介しています。
調教師や馬主のデータベースもありますが、重要なのは次の3点セットでしょう。
すべて同じフォーマットにデータを落とし込んでいるので、見やすいと思います。毎週データ更新していますので、参考にしてみてください。
もう一つ、ご自身で条件抽出できる方法も提供しています。こちらのほうがオリジナルの条件を何でも作れますので、そういうのがお好きな方は是非一度試してみてください。
三連複フォーメーション
過小評価に注目する場合は、券種の選定が重要であることも繰り返し述べています。
なぜ、過小評価条件と三連複がセットなのかについて解説した記事です。
こちらは、三連複フォーメーションの具体的な買い方を説明した記事です。
パンダズ競馬で三連複を推奨する理由が、期待回収率という考え方を通してご理解いただけると思います。
過小評価条件に注目する以上、三連複での購入はぜひチャレンジしてほしいですが、三連複に慣れていない方は、まずは予想サイトの無料予想を参考にするのをお勧めします。
三連複で実績があり、私が参考にしているのは次の2サイトです。ターフビジョンは三連複フォーメーションなので、当サイトでお勧めする方法に一番近いものです。人気薄の組み入れ方に注目してみてください。
いまの皆さんの予想方法はそのままでよいのです。そこに過小評価条件や券種というフィルターを新たに加えてみてください。
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