「長距離は騎手で買え」というのは、競馬は長距離になるほど騎手の駆け引きが重要性を増すことを言っています。
長距離が得意、というのをどうデータ化するかが難しいですが、短距離戦・中距離戦の勝率に対する長距離戦の勝率として指標化すると、興味深い結果になりました。
ここでは芝コース2500m以上を対象とします。長距離戦の件数は少ないので、単に件数が少なくて乱高下しているだけではないのか、という点には注意を要します。

【騎手別】長距離戦・短中距離戦の成績と回収率
障害戦を除いた2013年~2017年のすべての芝のレースから、まず長距離とそれ以外の短中距離に分けます。
長距離は件数が少ないので、騎手によっては5年で数件の騎乗回数ということもあります。そこで、5年間で40件以上の騎乗回数があった騎手に絞りました。
29名の騎手が抽出されました。やはり長距離は件数が少ないので、単勝回収率が非常に幅広くなっています。
さて、冒頭に述べましたように「長距離が得意な騎手」をどのように描写するのが良いのかいろいろ考えられますが、単純に次のような指標を考えてみました。
長距離戦得意指標=長距離戦勝率-短中距離戦勝率
この長距離戦得意指標の数値が大きいほど長距離を得意とする、と考えることが出来ます。
次の表は、長距離戦得意指標を大きいものから順に並べ替えたものです。回収率が長距離戦得意指標に良く相関していることが分かります。
説明のためにいくつかピックアップしますと、
- ルメール騎手は長距離戦勝率25%と圧倒的ですが、短中距離戦もそれくらいの勝率を誇りますから、結果的にオッズに織り込まれて回収率は93%です。もちろん93%も十分高いのですが。
- 三浦騎手は、短中距離戦勝率が7.7%ですが長距離戦では勝率が3.2%といまいちです。三浦騎手に対しては短中距離戦と同じような期待のされ方が長距離戦でもなされてオッズに反映された結果、回収率が28%となった、と言う見方ができます。(件数が少ないので、あくまでも説明的な見方ですが…)
最後に、先ほどの表をグラフ化してみましょう。横軸が長距離得意指標、縦軸が長距離戦の単勝回収率です。見事に正の相関をしています。
ちなみに、横軸を長距離勝率-短中距離勝率ではなく長距離戦勝率にしたものは次のようになります。あてはまりは、先ほどのグラフの方が良いことが分かります。

つまり、長距離勝率そのもので見るよりも得意指標で見たほうがファクターとして有効であることが分かります。長距離戦は出走件数が少ないので、騎手ごとに見るのではなく、得意指標がプラスの騎手、のような形でまとめてファクター化すると、それなりに使えるものとなります。
以上より、「長距離は騎手で買え」というのは第一には勝率のことを指していると思われますが、長距離戦の得意不得意がオッズに織り込まれていないため、馬券妙味も生じていることが分かりました。