以前、「複勝転がし」の解説をこちらの記事でしました。
「転がし」と対比される競馬必勝法として「追い上げ」というものがあります。
あるいは、マーチンゲール法という言い方もされますね。
マーチンゲール法はオンラインカジノの攻略法して紹介されるのをよく見ますが、本記事では、
- 競馬におけるマーチンゲール法
というものを解説していきます。
当サイトは、確率や回収率をテーマとしておりますので、小難しい内容となってしまうかもしれないですが、マーチンゲール法の本質的なところを、きっとご理解いただけると思います。
良かったら参考にしてみてください。
マーチンゲール法の一般的な解説
マーチンゲール法とは、
- 勝負をして負けた場合に、購入金額をオッズに応じて増やすことで、負けた分を一気に取り戻す賭け方
です。
増やす金額は2倍と説明されていることが多いですが、正確には「オッズに応じて」となります。この点は、あとに出てくる複勝マーチンゲール法のところで説明します。
競馬の話に入る前に、一般的なマーチンゲール法をまずは解説しましょう。
次のようなゲームを想定します
- 丁半博打
- 50%の確率で2倍の配当が得られる
もっとも単純な賭け事ですね。
一般的なマーチンゲール法
購入(A) | 合計購入(B) | 配当(C) | 配当差額(D) | 確率(E) | 確率購入(F) | 確率配当(G) | |
1回目で的中 | 100 | 100 | 200 | 100 | 50.0% | 50 | 100 |
2回目で的中 | 200 | 300 | 400 | 100 | 25.0% | 75 | 100 |
3回目で的中 | 400 | 700 | 800 | 100 | 12.5% | 88 | 100 |
4回目で的中 | 800 | 1,500 | 1,600 | 100 | 6.3% | 94 | 100 |
5回目で的中 | 1,600 | 3,100 | 3,200 | 100 | 3.1% | 97 | 100 |
6回目で的中 | 3,200 | 6,300 | 6,400 | 100 | 1.6% | 98 | 100 |
7回目で的中 | 6,400 | 12,700 | 12,800 | 100 | 0.8% | 99 | 100 |
8回目で的中 | 12,800 | 25,500 | 25,600 | 100 | 0.4% | 100 | 100 |
9回目で的中 | 25,600 | 51,100 | 51,200 | 100 | 0.2% | 100 | 100 |
10回目で的中 | 51,200 | 102,300 | 102,400 | 100 | 0.1% | 100 | 100 |
10回目で不的中 | 51,200 | 102,300 | 0 | -102,300 | 0.1% | 100 | 0 |
合計 | 100.0% | 1,000 | 1,000 |
不的中が連続して続く確率は、試行を無限大にしてもゼロにはなりませんから、このような表は縦方向にどこまでも続くことになります。ここでは分かりやすいところで試行10回までで説明します。
ポイントは、10回目に不的中となる行を入れることです。これを入れることで、
- 1回目から10回目までの的中
- 10回目の不的中
の合計11事象の確率(E)の合計が100%となり、ゲーム全体が適切に描写できていることになります。
次に表の説明をしますが、お判りになる方は、次の枠内の部分は読み飛ばしてください。
- 常に100円の配当差額(D)を得るためには、購入金額(A)を倍々にする必要があり、ある事象(行)での合計の購入金額は(B)、配当は(C)となります。
- 配当差額(D)=配当(C)-合計購入(B)です。
- 確率(E)は各々の事象(行)が発生する確率です。3回目の的中は、1回目不的中→2回目不的中→3回目的中、の結果生じますから、0.5×0.5×0.5=0.125、つまり12.5%が発生確率です。
- 確率購入(F)、確率配当(G)が分かりにくいかもしれませんね。ある事象(行)でこのゲームが終了したときの合計購入(B)と配当(C)を確率(E)で乗じています。これらを全部足すことでゲーム全体の購入金額と配当が得られます。
- このゲーム全体での期待回収率は最後の行にある、合計の確率配当1000/確率購入1000=100%となります。
マーチンゲール法について一般的に言われることは、3つあります。上の表を見ながら読むと良くわかると思います。
- 不的中が続いた場合、購入金額が倍々で増えていくので、天文学的な数字になることがある。確率は低いとはいえ、かなり高いリスクを内包している。
- ゲームによっては購入金額に上限が設定されており、その場合は莫大な損失を出して強制終了してしまう。
- 不的中が続いた場合、相当の資金が必要になるが、得られる配当差額は100円である。このような投資行動が合理的なのか。
以上のような観点を踏まえると、マーチンゲール法が決して必勝法などではないことは、わかってもらえると思います。
そして、より重要で本質的な点が100%という回収率によって明示されています。
つまり、マーチンゲール法を使ったこのゲーム全体では、期待回収率は100%であって何ら妙味はなく、単独で丁半博打を行った時と何ら変わらないのです。わざわざリスクをとってまでマーチンゲール法を行う意味は皆無です。
必勝法でも攻略法でも何でもありませんし、単に期待値が100%のゲームを、自らリスクが大きくなるように追い込んでいるだけ、という見方もできます。
マーチンゲール法を競馬にあてはめる
もういきなり、結論を出してしまった感じですが、せっかくですから、競馬の実例に当てはめてみましょう。
単勝マーチンゲール法(単勝オッズ2.0倍)
分かりやすくするため、単勝オッズ2.0倍の馬券を単勝で買い続けるという設定にします。
2016-2020の単勝オッズ2.0倍の好走率・回収率は次の通りです。
単勝オッズ2.0倍の成績・回収率(2016-2020) ※障害戦除く
オッズ | 1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 出走 | 勝率 | 連対 | 複勝 | 単回 | 複回 |
2.0 | 266 | 157 | 91 | 182 | 696 | 38.2 | 60.8 | 73.9 | 76 | 86 |
次のようなゲームです。
- 単勝オッズ2.0倍で単勝回収率は76%です。
- 勝率はオッズが2倍なので76÷2=38%で、表中と同じです。
- 購入金額は先ほどと同様、負けたときに2倍にしていきます。
これを先ほどの表に当てはめてみましょう。
購入(A) | 合計購入(B) | 配当(C) | 配当差額(D) | 確率(E) | 確率購入(F) | 確率配当(G) | |
1回目で的中 | 100 | 100 | 200 | 100 | 38.2% | 38 | 76 |
2回目で的中 | 200 | 300 | 400 | 100 | 23.6% | 71 | 94 |
3回目で的中 | 400 | 700 | 800 | 100 | 14.6% | 102 | 117 |
4回目で的中 | 800 | 1,500 | 1,600 | 100 | 9.0% | 135 | 144 |
5回目で的中 | 1,600 | 3,100 | 3,200 | 100 | 5.6% | 173 | 178 |
6回目で的中 | 3,200 | 6,300 | 6,400 | 100 | 3.4% | 217 | 220 |
7回目で的中 | 6,400 | 12,700 | 12,800 | 100 | 2.1% | 270 | 272 |
8回目で的中 | 12,800 | 25,500 | 25,600 | 100 | 1.3% | 335 | 337 |
9回目で的中 | 25,600 | 51,100 | 51,200 | 100 | 0.8% | 415 | 416 |
10回目で的中 | 51,200 | 102,300 | 102,400 | 100 | 0.5% | 514 | 514 |
10回目で不的中 | 51,200 | 102,300 | 0 | -102,300 | 0.8% | 831 | 0 |
合計 | 100.0% | 3,102 | 2,370 |
10回目不的中まで含めたこのゲーム全体の期待回収率は2370/3102であり、76%となっていますね。
結局、マーチンゲール法であろうが何であろうが、そのゲーム(この場合は単勝オッズ2.0倍の単勝1点購入)がもっている期待回収率76%の勝負を、ただ単純に何回も繰り返しているだけなのです。しかもどんどん投資金額を大きくして自分を追い込みながら…。
さらにいうと、先ほどの丁半博打との違いで、競馬ならではのデメリットも浮き彫りになっています。
競馬には控除率があります。この事例の場合はさらに過大評価傾向で期待回収率が低く76%しかありません。
その結果、連続して不的中となる確率が、同じ購入金額に対して先ほどよりも高くなっていることが分かります。
つまり、
- 連続不的中リスクが高い
のが競馬におけるマーチンゲールの特性です。
もう一つ、次の観点も重要なところです。
私は、以前の記事で「複勝転がし」の場合は、競馬が上手な方は、転がすことに意味はあると解説しました。
マーチンゲール法の場合は、どのようにいえるでしょうか?
競馬上手な方は、他の馬券購入者よりも的中精度が良いので、同じオッズなら期待回収率が高いということです。仮に120%であるとしましょう。
しかしながら、もう結論はお判りと思いますが、マーチンゲール法では期待回収率は120%のままです。
期待回収率が高い競馬上手な方でも同じく意味はありません。ここは複勝転がしとの違う部分です。
- 複勝転がし:単試行の期待回収率100%を超えると、転がすほど期待回収率が上昇する
- マーチンゲール法:単試行の期待回収率がいくらであっても、マーチンゲール法での期待回収率は同一
複勝マーチンゲール法(理論複勝オッズ1.064倍)
リスクが大きいということを実感してもらうため、低オッズの複勝でのマーチンゲール法を考えてみましょう。単勝オッズ1.3倍とします。
複勝率が90%超えですから、なんとなく期待してしまいますね。
単勝オッズ1.3倍の成績・回収率(2016-2020) ※障害戦除く
オッズ | 1着 | 2着 | 3着 | 着外 | 出走 | 勝率 | 連対 | 複勝 | 単回 | 複回 |
1.3 | 116 | 35 | 15 | 18 | 184 | 63 | 82.1 | 90.2 | 82 | 96 |
このゲームは次の設定です。
- 単勝オッズ1.3倍を購入し続ける
- 複勝回収率は96%なので平均的な複勝オッズは1.06倍
まず、配当差額を一定にしなければマーチンゲール法が成立しません。オッズが2倍のときは、購入金額を2倍にするのですが、実はこの関係性は、
- 購入金額の倍率=オッズ÷(オッズ-1)
という式で表せます。
複勝オッズ1.06倍の場合は、購入金額を17.66倍にすることで、配当差額6円が常に得られるゲームとなります。
さて、これを先ほどの表に当てはめてみましょう。
購入(A) | 合計購入(B) | 配当(C) | 配当差額(D) | 確率(E) | 確率購入(F) | 確率配当(G) | |
1回目で的中 | 100 | 100 | 106 | 6 | 90.0% | 90 | 95 |
2回目で的中 | 1,767 | 1,867 | 1,873 | 6 | 9.0% | 168 | 169 |
3回目で的中 | 31,211 | 33,078 | 33,084 | 6 | 0.9% | 298 | 298 |
4回目で的中 | 551,396 | 584,474 | 584,480 | 6 | 0.1% | 526 | 526 |
5回目で的中 | 9,741,335 | 10,325,809 | 10,325,815 | 6 | 0.0% | 929 | 929 |
6回目で的中 | 172,096,911 | 182,422,719 | 182,422,725 | 6 | 0.0% | 1,642 | 1,642 |
7回目で的中 | 3,040,378,756 | 3,222,801,475 | 3,222,801,481 | 6 | 0.0% | 2,901 | 2,901 |
8回目で的中 | 53,713,358,017 | 56,936,159,492 | 56,936,159,498 | 6 | 0.0% | 5,124 | 5,124 |
9回目で的中 | 948,935,991,638 | 1,005,872,151,130 | 1,005,872,151,136 | 6 | 0.0% | 9,053 | 9,053 |
10回目で的中 | 16,764,535,852,269 | 17,770,408,003,399 | 17,770,408,003,405 | 6 | 0.0% | 15,993 | 15,993 |
10回目で不的中 | 16,764,535,852,269 | 17,770,408,003,399 | 0 | -17,770,408,003,399 | 0.0% | 1,777 | 0 |
合計 | 100.0% | 38,501 | 36,730 |
なんだかすごいことになりましたね。
ゲーム全体の期待回収率は36730/38501=96%となります。先ほどの説明と同じですが、単独試行と同じ回収率ですね。
そして、このゲームがやばいのは、もはや直感的にわかっていただけるでしょう。
オッズが低い場合、確率的には低いとはいえ、購入金額が天文学的な数字に早い段階でなっていきます。しかも最初の購入金額を100円と想定すると、天文学的購入金額をベットしても、得られる配当差額は6円なのです。
このようなゲームに合理性がないのは明らかでしょう。
マーチンゲール法とは、このようなゲームなのですよ。
競馬におけるマーチンゲール法のまとめ
以上を踏まえ、マーチンゲール法に対する考え方をまとめます。
- 単発勝負とマーチンゲール法とのあいだに、期待回収率に何ら差異がない。
- 期待回収率というのは無限大まで試行回数を増やしたときに求められるわけだが、無限大の試行回数は実施できない。よって、現実の世界では、資金に上限がなければ、理論上利益を出すことはできる。
- しかしながら、マーチンゲール法を構成する各々の試行の期待回収率もすべて同じであるから、購入金額を大きくしていくことの合理性はどこにもない。
- マーチンゲール法は、リスクをどんどん大きくしていって自分を追い込む無意味な投資法である。
- 競馬の場合、期待回収率が100%を切る場合、連続不的中のリスクがさらに高くなる。
- 複勝転がしとは違い、予想が上手で期待回収率が100%を超えるような方にも、意味がない。
パンダズ競馬おすすめの馬券購入法
このような必勝法とか攻略法とかに惑わされず、まじめに競馬に取り組みましょう(笑)
競馬で儲けるアプローチは、
- 他の馬券購入者を出し抜いて的中率を高めるか
- 過小評価条件に注目して期待回収率を高めにもっていくか
以上のいずれかしかないと考えています。
そして、言い方は悪いですが、凡人でもなんとかなるのが後者の方法だと思っています。前者はやっぱりハードルが高いですよ。
パンダズ競馬では様々な過小評価条件を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
基本的なやり方は、自分の予想から、
- 過小評価条件を当てはめて買い目を減らしていく
というアプローチですが、過小評価条件から印をつけていくという方向でも構いません。
ご自身で過小評価条件を抽出できるサイトも作りました。こちらのほうが条件を何でも作れますので、そういうのがお好きな方はぜひ一度試してみてください。
そしてもう一つ重要な点があります。それは、三連複で購入することです。
過小評価馬は単複で購入するよりも、頭数を重ねたほうが相乗効果で期待回収率が上昇するという性質があります。
私はこのことを知って、単複メインから三連複メインに変えて回収率が爆上がりしました。
なぜ三連複が良いのかはこちらの記事で説明しています。
三連複に慣れていない方は、予想サイトの無料情報を参考にするのをお勧めします。
私が参考にしているのは次の2サイトです。いずれも三連複の無料予想です。
特にターフビジョンでは、毎週必ず三連複フォーメーションで出しているので、軸馬と人気下位をどのようにフォーメーションに組み入れるのか、参考にするのが良いでしょう。